22.改伊吹型軽空母

【前期艦】

 天城 呉        昭和17.2 (1942改装・旧大鯨・昭和8年計画潜水母艦・昭和12再建造)

 笠置 佐世保    昭和17.3 (1942改装・旧千代田・昭和9年計画水上機母艦)

 葛城 横須賀     昭和17.5 (1942改装・旧千歳・昭和9年計画水上機母艦)

 阿蘇 三菱長崎 昭和17.1 (1942改装・旧瑞穂・昭和9年計画敷設艦)


【後期艦】

 生駒 鶴見      昭和17.7  (1942改装・旧明石・昭和10年計画工作艦)
 伊吹 舞鶴      昭和17.2  (1942改装・旧剱崎・昭和10年計画潜水母艦)

 妙義 舞鶴      昭和17.8  (1942改装・旧高崎・昭和12年計画給油艦)  
  筑波 呉        昭和18.3  (1943改装・旧日進・昭和12年計画水上機母艦)

 霧島 舞鶴      昭和18.5  (1943改装・追加計画・新造)
 比叡 舞鶴      昭和18.6  (1943改装・追加計画・新造)

 

 伊吹型がどのようにして建造されたかは第一刊で詳しく話しました。できればもう一度ご覧いただきたいと思います。ところで当初は筆者のCAD適応力、言い換えれば習得した技術が真にお粗末で、切り張りで作った図面を発表しており、かねがね書き換えないといけないと考えておりました。この点は改翔鶴型も同様です。

 そんなことを思っていた今年(2015)の夏、“艦船模型スペシャル誌”で畑中省吾氏が“日本軽空母考”という素晴らしい解説を著してくれました。同時に同誌は龍鳳の1/700模型の写真も掲載してくれました。後部の何をするかは未だに分からない大きな円筒型の構造がはっきりわかりやっと書き直す気になりました。今回の図面は畑中省吾氏の図面を参考にさせて頂いております。参考書は“艦船スペシャル”です。

 以前の図は龍鳳と伊吹を合体させたもので大鯨の長大な船体ともマッチして雰囲気は良かったのですが、機銃は25㎜3連装のまま、その他の部分は大幅に省力されていました。今回の改修では25㎜機銃は止め、戊式40㎜連装機関砲を米国のインデペンデンス級並に主たる武器として搭載することにしました。65口径10㎝連装高角砲は両舷後部のスポンソンに搭載するだけとなり、40㎜機関砲は艦尾の2門を含み飛行甲板両サイドに7~8基(28門~30門)を搭載するように変更しています。生駒以降の後期建造艦とは配置に違いはありますがほぼ同数を搭載しました。また、102,000馬力とした以前の図面の煙突だけでは排煙が不十分と考え、龍鳳の煙突の位置に小型の起立煙突を設置し排煙の問題を解決しています。また、依然の速力は32㌩でしたが燃焼技術の向上により33㌩を出すことが可能となったことも付け加えます。

 このクラスは自分の思い入れも強く、どのようにしたら完全に軽空母として艦隊に参加できるかを考えながら作図しましたので、時間は3週間、作成図面は21枚になりました。“仮想の空母に何やっているの?よほど暇なのね!”と言われそうですが伊吹と龍鳳を一体化させることはかなり大変でした。まず、伊吹の艦橋が意外と大きいのです。それで龍鳳の前部高角砲の位置を煙突としその前に艦橋を持ってきました。25㎜機銃のスポンソンを40㎜機関砲のそれに変え間隔を広げました。初めは前部にも2基4門配置してみたり、飛行甲板裏に埋め込まれたカタパルトの射出用シリンダー装置を書き入れたりしてみました。イ-400がドイツから運んだグラーフツッペリンの2番艦ピーターストラッサー用の油圧カタパルトです。ところがこれでは飛行甲板が厚すぎて伊吹にも龍鳳にも似ていないのです。雰囲気がまるで違う。伊吹の計画吃水が龍鳳より低いことに気づき吃水線を僅かにずらしてみました。その他、艦橋より前部の機関砲を1基に、カタパルト下部のシリンダー装置を若干薄くする。

 今度は平面図です。機関砲の間隔を広くし、高角砲は後部だけにしましたのでほぼ書き直しです。また飛行甲板も25mに拡幅しました。飛行甲板の前端は15.75mに後部は22mに拡幅。ここで米空母と対比しますと米空母は護衛空母でも幅30m当たり前なのです。初めて知りました。日本の空母で幅30mを超えるのは大鳳と信濃だけです。また、米空母は40㎜機関砲2基に対して射撃装置1基がトリオのように連動していることを知り、わが方もそのように対処しました。無論カタパルトは2基で2本の位置をずらし発艦時間の短縮を考慮しました。カタパルトの長さは左舷が35m、右舷が攻撃機用で38mになりました。

 しかし、これでも伊吹になりません。ここで気が付きました、最初の頃、艦橋上に置けばいいと考えていた方位測定用ループアンテナを艦橋前に復活させたのです。そしたらやっと伊吹になり始めました。その艦の特徴になるものは外しては駄目ですね。 終戦後に撮った呉での写真が左舷なのでいやに船体が華奢に見えるのです。あの華奢さがでない。まだ、完成していないからだろうかと考え、前部の40㎜機関砲は1基にして前半をすっきりさせました。更に高度測定レーダーが未装備だと気づき6号レーダーとしてマストに書き加えてました。右舷煙突側の40㎜機関砲は遮熱用のカバーを付けたいのですがぴたりくる物が無いのでそのままです。インデペンデンス級も特別つけておりません。最後に艦橋の前方と中部を分ける線を書き込みました。そうしたらやっと伊吹型もどきの軽空母が完成しました。以上がここ2週間の格闘戦のあらましです。
 


さて後期艦ですが、以前も東進のためには艦首甲板を一層上げた方が波切りが良くベターと考えており、後期艦の甲板は上げてみました。ところが、そのままあげると艦首が工作艦明石のようになってしまうのです。何か船体がのっぺりしてしまらない。そこでシーアを少しなだらかにしたところ雲龍のような雰囲気がでましたのでこれで決まりです。


基準排水量14,900㌧ 全長215.65m 最大幅21.58m 飛行甲板幅25m(前部17m後部22m)吃水6.7m 艦本式ギアードタービン2基2軸 主缶6基102,000馬力 速力33㌩ 18㌩で9,000浬 兵装65口径10㎝連装高角砲×2基 戊式40㎜連装機関砲14基(後期艦15基)25㎜3連装機銃×2基 搭載機常用 紫電改24機 流星16機 補用6機

今回は筆者の改造計画の一部始終を書きましたが如何でしたでしょう。つくづく思いますが、今はCADがあるので比較的簡単に手直しが出来ますが、実史の艦政本部の図面担当の職工技師は大変な思いをして作図していたことがよく分かりました。多分偉いさんは指示するだけでしょうが。

 尚、本級の搭載戦闘機を紫電改24機としましたが烈風の場合には20機になります。この艦たちの活躍を書きたいのですが、改翔鶴型と部隊を組んでいますので改翔鶴を書き直した処で書きたいと思います。