仮想海軍艦艇

  ここに10年前の世界の艦船があります。副題は終戦60周年を迎えて“昭和の日本海軍を考える。”となっています。その中で顧問の石渡幸二氏は「指揮系統の乱れと無責任体質」という稿を書かれていますが、まさしく本稿で書かれたとおりミッドウェー海戦でその占領が目的なのか、米海軍を誘いだし機動部隊を撃滅することが目的なのか、はっきりしない大海令のことや日本のシーレーンについてもあまり気にしなかったのみならず、米海軍も日本までのシーレーンは相当長いのにこれについては全く興味すら持っていなかったことなどを挙げています。これからの仮想戦記物はその辺を描くとかなり違った展開になるような気がします。ソロモンまで行ったらそれからはひたすら守りに徹していたわけですから・・・。

その点、和泉祐司氏著の“帝国海軍激戦譜”は石渡氏の指摘を小説化した傑作だと思います。前刊で私は潜高中呂-200型なるものを想像し、これを200隻建造しました。無論、米海軍のシーレーンを攪乱する目的で考えたものですが、構想は良いと思っています。

それから陸軍の特殊艦神州丸(しんしゅうまる­=日本のこと)が素晴らしい船であることが分かりました。現代の強襲揚陸艦の先駆けが日本陸軍にあったことが分かります。これなども建造を簡易にして強襲揚陸目的を持った戦標船を造ればよいわけです。本刊では日本がそれほど資源的に困っていない前提で仮想艦艇を考えていますので、この種の船にも対象を広げたいと思います。これ等を多数造らないとハワイを含めてソロモンの東にある島嶼攻略作戦がうまくいきません。実際陸軍は形を変え10隻ほどの上陸用舟艇母艦を建造するのですが完成時期が昭和16年~19年と遅すぎたのです。これも2年ほど前倒ししましょう。輸送艦にまで思考を広めて勧めて考えていきたいと思います。しかし、あまりにも範囲が広すぎて発表が先延ばしになる可能性大なので、これからは出来たものから発表していくことにします。前刊で書ききれなかった駆逐艦の改造についてもまとまり次第発表していきます。

この時代の背景をもう一度申し上げます。

大陸からの兵の引き上げは順調に進み、陸軍の徴兵が減った。陸軍はドイツに範をとった機械化部隊化の道を選び、海軍と一部共有化した陸戦隊、いわゆる海兵隊の萌芽期を迎えた。これが昭和15年の状況である。特に造船所、軍事用工業製品製作の一般社員や職工等の徴兵は大幅に減り、あるものは前職に復帰した。

 また、造船所は室蘭、大連などが稼働状態になっております。日立造船(因島)播磨造船所、三井玉野、日本鋼管鶴見、日本海ドック、浪速ドック、新潟鉄工等の諸造船所はそれぞれ輸送船、海防艦などの専門造船所として量産体制が確立しつつあった。同時に支那事変や日中戦争体験者の現場復帰は軍に様々な価値ある情報をもたらした。最大のものはロジェスティックという概念が入ってきたことである。これにより輜重輸卆を軽んずる風潮を払しょくし、装備品や食料の輸送が全てを制するという観念に方向が変わった。また、砲・銃器、砲弾の改良、陸軍部隊の機械化、航空機の高速化と操縦席の防弾化、更に三国同盟交渉中の昭和13年(1938年)、超大型潜水艦イー400の対独訪問により進水直後の空母グラーフツエッペリンの2番艦用の圧搾空気型カタパルトを入手した。同時にレーダー等の通信機器や通信機器・水中探信義とソナーの設計図も入手し緊急開発と生産体制の確立に取り掛かった。満州、樺太からの石油、鉄鉱石入手はより大規模になり、特殊な資源を除いて国内は好景気を迎えることになった。

という時代背景です。なんか今より良いですね。
こんな背景で昭和16年12月8日の開戦へと向かうわけですが、軍は世界の現状を知れば知るほど米との関係悪化の原因が分かりません。物は足りているわけです。問題は三国同盟にあり、ヒトラーが欧州制覇、第三帝国の建設という野望を果たすために英、仏に挑み、欧州を戦場としてしまった。米国大統領ルーズベルトは英国からの支援要請に答えるべく、何とか口実を付けて参戦のきっかけを作りたかった。そこで短期間で片づけられそうな“日本”にチョッカイを出し、参戦するための理由をひねり出した。ところが“日本”はルーズベルトの考えている程甘っちょろい国ではなかった。こんなところが開戦の口火になるのでしょうか!

 日本にとって重要な課題はアジアにおける良好な状況をいかに維持するかであり、資源や資材をいかに確保するか、言い換えると長大なシーレーンを如何にして防御し、ロジェスティックを確立するかにある訳です。この刊では満州でも石油が確保されており、更に樺太でも石油は採掘されていることが前提です。が、日本は島国でありどうしても渡洋という行程を避けて通ることはできません。どうやって護衛しましょうか?仮想戦記物にはこうゆう地味な部分が著されているものありません。あまり面白くありませんからね。さてどうやってこれを解決していくのか?そこら辺は皆さんの創作力に任せて私は軍艦の整備に邁進することにします。