9.防空巡洋艦“十勝”級

 「十勝」は私が考えた艦ではない。阿賀野型は開戦と共に艦隊での活躍が期待され、見事にこれに答えた。その結果さらに大型の防空艦が整備されることになった。これが内田広樹造船監の設計による“十勝”型である。当初設計は長10㎝連装砲12基の設計であったが建造に当たっては両舷中央部の2基が外され10基となった。その分、40㎜機関砲を増設することになった。
  その後の調査で海軍は昭和12年から17年の計画の中で10cm65口径連装高角砲12基搭載の防空巡洋艦を計画していたことが判明しました。
ただ、机上だけの計画で基本設計には至らなかったようですが内田氏が見事に再現してくれたものと判断いたします。

15年度計画  十勝(とかち)      室蘭 昭和18年1.05
                     石狩(いしかり)    舞鶴 昭和18年2.10

16年度計画  九頭竜(くずりゅう)  呉   昭和18年2.09
                     四万十(しまんと)   長崎 昭和18年2.10
                     釧路(くしろ)          室蘭 昭和18年6.23
                     紀ノ(きの)          室蘭 昭和18年12.1

以上の6隻が建造され、18年12月までに完成した。

阿賀野級の拡大型にあたるが本艦は初めから防空巡洋艦として建造されたため電探装置は対空用のものが装備され、それが高角砲群と連動されたためレーダー射撃が可能になった。更に大型化そのものが本艦の防御能力に貢献し、様々な場面で空母部隊の護衛が強化されたため空母の被害は著しく減少した。その後より大型の防空巡洋艦の計画がされたが、改大淀型巡洋艦の就役が順調に推移してきたので防空専門の艦は本級が最後となった。

全長194.7m 幅21.5m 吃水6m 基準排水量11,200㌧ 主機艦本式ギアードタービン4基、12万馬力33ノット 10.5㎝連装高角砲10基、ボ式40㍉4連装機関砲12基 25㍉3連装機銃16基、同単装10基。