78.空母“安芸”級の第2次改造



【要 目】
基準排水量50,500㌧(←47,000㌧)満載排水量64,100㌧(←60,250)
全長304.5m × 最大幅38m(バルジ片舷1.5m含む)× 吃水10.8m(←10.5m)
飛行甲板高さ16.05m(←16.15m) カタパルトC-5型×3機(射出能力30㌧)
着艦甲板長さ198m(←174.5m)  最大幅80.3m(←78.4m・他艦は80.2m)
格納庫長さ200m × 幅29.5m × 高さ6.6m 
飛行甲板装甲95㎜ 範囲:船体中央部230m × 30m
機関:艦本式タービン55,000馬力 × 4基(22万馬力) 4軸
速力30.5㌩(←33.5㌩) 乗員2,950 + 航空要員2,380名 合計5,330名
※カッコ内第1次改造時

【兵 装】
5吋自動砲 × 3基
(1978年以降:20㎜CIWS × 2基 8連装シースパロ―短SAM × 2基)
搭載機:戦闘機12 × 2(F-8&F-4各12機) 24機 攻撃機(A-6&A-7各12機)24機
 早期警戒機4機  ヘリ8~10機   輸送機・空中給油機5機 合計65~77機

第2次改造実施時期
1.摂津 昭和41年(1966)~昭和45年(1970) 呉工廠実施
2.安芸 昭和43年(1968)~昭和47年(1972) 横須賀工廠実施
3.甲斐 昭和45年(1970)~昭和48年(1973) 三菱長崎実施
 3姉妹は上記のように3艦とも時期をずらして改造工事にかかった。甲斐のみ3番目の改造だったので期間が3年で済んでいる。この間、海上防備は薩摩級9隻に委ねられたが搭載機の性能から言っても相当大変な事態であったことが想像できる。F-8クルセイダーが各艦十分に搭載できなかった時期と重なり各艦12機程度しか割り当てがなかったからである。“摂津”型の改造は米海軍がミッドウェー級に行ったSCB-101/66に相当するもので大型化する搭載機に対応すべく、エレベーターの能力拡大(48㌧・2機を同時揚降)、新型カタパルト(射出能力増大)の採用、各種通信機器の新型化さらに対空砲の撤去(CIWSへの交換)などであった。これによりF-4ファントムが搭載可能になり各艦24機が配備された。この機は航続距離3,000㎞以上であり速度もM2.2という高性能機で海軍が喉から手が出るほど欲しい機体であった。改造後の搭載機はクルセイダー及びファントムそして更に改造の進んだ流星改艦上攻撃機、早期警戒機及びヘリとなり70機前後を搭載した。1960年代からソ連の海洋進出が活発になり空母はより効率の良い戦闘を行うことが求められた。早期警戒機はこのような要求に応じるものだが米軍の機密度が高く輸入が出来なかったため国産機の改造で充当させることになった。選ばれたのが旧海軍の“銀河”及び“陸軍4式爆撃機”飛龍“でありそれぞれ中島と三菱にE-2Bに相当する改造試作が指示された。銀河の改造はE-1のレドーム及び機体前部に海上警備用のレーダーを設け200浬(360㎞)の範囲を観測するものであった。爆撃機“飛龍”の改造も同様であったが新型レーダーカバーが入手できたためレーダーを大型化し探知範囲も拡大することができた。警戒性能は甲乙つけ難く各5機ずつが製作され艦上にて試験ののち“飛龍”が採用された。乗員の居住性の良さと機体のゆとりが決め手となった。その後この機は“蒼海Ⅱ”と命名され100機以上が生産され改修されつつ以後60年にわたって艦隊の目として活躍することになった。この時期(1964~)から海軍は航空機の機体開発を止めエンジンやレーダー及び通信機器の開発に専念することとし、機体は輸入もしくはノックダウンで国内生産という方針となった。というのも空母が大型化するとはいえその保有数が10隻以下になったのが第一の理由であり、英国の場合と同じであるが300機以下の調達数では機体が高価になりすぎてしまうからであった。その後もF-14トムキャット・F-18ホーネットを採用することになる。下記は米空母ミッドウエーの搭載機であるが“安芸”級もおおむね同艦と同じ種類の搭載機を採用していた。

1960年代ミッドウエーの搭載機
F-8クルセイダー又はF3 24機~28機 
攻撃隊A-4 × 24機  + A-1 × 12機
重攻撃隊A-3 × 10~12機
写真偵察隊FF-8 4機  早期警戒飛行隊AD-5 × 10機  計74機

1970年代ミッドウエーの搭載機(ベトナム戦争中)
F4Uファントム×2飛行隊 24機 攻撃隊A-6又は9 × 1飛行隊 12機
攻撃隊A-7 × 2飛行隊 24機  早期警戒機E-2C × 4機 対潜飛行隊S-3A × 10機
ヘリSH-3D × 8機(1飛行隊) 輸送機 × 1機   合計83機



【要 目】
基準排水量47,000㌧       満載排水量59,800㌧
全長293m × 最大幅49.3m × 吃水10.7m
機関:艦本式タービン55,000馬力 × 4基 22万馬力  速力33㌩
飛行甲板高さ16.15m  着艦甲板長さ174.5m ×飛行甲板最大幅49.3m
カタパルトC-3型 × 2基  12.7㎝自動砲 × 3基
上図は安芸級の第1次改造の姿である。この時も対ジェット戦闘機対策としてアングルトデッキ、エレベーターの大型化、カタパルトの能力アップなどがおこなわれ、第一線級空母としての能力を維持している。この時点では搭載機も国産のものが主でありまだ震電の艦載型が戦闘機として搭載されておりジェット機を艦載機にすること自体が実験であった。搭載機がまだ小型であったため当時は100機近く搭載されている。また、膨張式救命筏はまだ海軍に採用されていない時期だったので格納庫の隅に木製筏が多数搭載されていた。



【諸元要目】略・・・“甲斐”とほぼ同じ
艦橋上のレーダーの配置が一部異なっている。これは位置の違いで性能の差がどう出るかの実験であったが大きな差異は認められなかった。“摂津”は北部方面に出動する機会が多く北海道室蘭を臨時の母港としていた。戦中室蘭は海軍工廠がおかれ港内施設も軍港として整っており、造修設備も工廠のものがそのまま使えるようになっていた。



1972年(昭和47年)改造終了後“安芸”は他艦に先駆けて対空火器の近代化に着手し5吋砲を全て撤去しCIWS2基(摂津は3基)と8連装シースパロ―ミサイル2基を搭載した。他艦もこれに続き1975年以降同様の兵器が搭載された。
速力は新造時の33.5㌩からバルジの追加などで30.5㌩に落ちているがカタパルトが新型のものに変わったため搭載機の発艦には問題なかった。また、改造による重量増から飛行甲板高さが16mになり波をかぶることもあった。飛行甲板高さはミッドウエー級が15m、エセックス級が17mであったがどちらにしても大波の場合は波につっこむ形になるようだ。この問題は次世代空母の課題となった。本級はこのような改造を行いながら1990年代後半まで現役を続けたが新新空母の就役により解役になった。なお“甲斐”は2008年まで練習空母となっていた。

陸軍4式重爆“飛竜”→早期警戒機“蒼海Ⅱ型”



1942年初飛行 1943年6月より爆撃機“飛竜として生産開始 三菱重工
1964年2月(昭和39) 早期警戒機として再生産開始 2017年まで生産 生産機数128機
全長18.7m × 幅22.5m(翼折畳時12m)× 高さ5.6m(6m)
エンジン:ハ-104空冷星形(1,900馬力)× 2基(1998年ハ-134 5,000馬力 × 2基に改良)
自重 8,649㎏(→10,150㎏)  最大重量13,765㎏(→15,165㎏)
速力537km/h (→500km/h ) 巡航速度400km/h
航続距離3,800㎞(→3,500㎞) 前方見張り用レーダー350㎞走査 × 1 ソナー × 2
乗員5名      ※()内早期警戒機“蒼海Ⅱ”改造後の値

海軍銀河爆撃機→早期警戒機“蒼海Ⅰ型”



1942年6月初飛行 1943年8月生産開始 総生産機数1,102機(10機) 中島
全長15m × 幅20m(翼折畳時8.5m) × 高さ5.3m
エンジン:誉12型→火星(1,850 × 2基)
自重10,500㎏  最大荷重13,500㎏
速度522.3㎞/h (5,400m) 航続距離1,815㎞  上昇限度9,560m
爆装:250又は500㎏爆弾 × 2 魚雷800㎏ × 1基

F-8 クルセイダー 戦闘機



1952年開発開始  1955年9月配備開始 
全長16.53m × 全幅10.87m(翼折畳時6.86m) × 高さ4.8m
エンジン;P&W J-57-p-20    速度 M-1.7
自重;7,956㎏  最大離陸重量13,368㎏
搭載燃料;3,062ℓ   装備;サイドワインダー × 4基 20㎜ × 4基
航続距離2,339㎞   戦闘行動半径 657㎞
海軍においては“薩摩級”搭載用で配備

F-4 ファントム



最初の全天候型双発戦闘機。1958年5月初飛行 1959年より配備開始 
1973年より退役開始。
全長19.20m × 全幅11.71m(翼折畳時)× 高さ5.02m
エンジン;GE J79-GE-17ターボジェット × 2基(5,360㎏ × 2基)
速度M 2.23  巡航速度 940㎞/h  戦闘行動半径680㎞  上昇限度18,975m
自重 13,757㎏  最大離陸重量16,706㎏
燃料搭載量 7,549ℓ  外部タンク12,627ℓ
装備;20㎜バルカン砲 × 1基  AIM7 × 4基 AIM9 × 4基  乗員2名
胴体中心に最大8,480㎏を搭載可  その他爆弾多数

A-6E イントルーダー



全長16.64m × 幅16.15m × 高さ4.75m
機体重量11,630㎏   最大離陸重量27,500㎏   最大搭載量15,870㎏
エンジン:P&W J52-P8Bターボジェット9,300LBF(41.4 knt)× 2基
速度 1,040㎞/h  航続距離5,220㎞    上昇限度12,400m
兵装:サイドワインダー × 2基  AGMブルパップ × 4基  ハープーンAGM × 4基
対レーダーミサイル・スタンダードAGM-78 × 2基
ロケット弾ポッド × 12機用  爆弾誘導爆弾2 4~5発

A-7 コルセアⅡ



A-4スカイホークの後継機として1966年10月に配備が始まった機体。速度も亜音速、攻撃アイテムの搭載量確保という条件で開発・採用された。エンジンは推力向上させたTF30-P-8に変更されA-7Bとなった。最後のD型は更にエンジン強化をしてTF-41エンジンとなっていた。

全長14.06m × 全幅11.8m(翼折畳時6.8m)× 高さ4.88m
軽荷重量9,033㎏  最大離陸重量13,200㎏
エンジン;アリソンTF41(6,577㎏) × 1基 
速度1,123km/h=M0.92  巡航速度860km/h
航続距離4,600㎞(300ガロン外部タンク4基搭載時)
上昇限度12,800m
【武装】 20㎜機関砲 × 1基(1,030発)
ミサイル:サイドワインダー × 2基 AGM45・62・65・88各2基
ロケット:ロケットポッド × 4基
爆 弾 :各種爆弾30 or 大型弾 1~2発