83.新型イージス巡洋艦

21世紀の新型駆逐艦&巡洋艦の整備
海軍は驚異的な経済発展した中国が外洋を目ざした海軍力の増強を企図していること、北朝鮮がミサイル・核戦力を急速に拡充すること鑑み以下に述べる方針を立て、これを実施することを決定した。それは海上における対ミサイル防御力の向上と国土の総合的防御力を充実させるためイージスシステムを拡大導入し同システムによる第一次的国土防衛とするものであった。具体的には以下のようになる。
①航空母艦は大型空母“近江、若狭、上総”の3隻が引退・除籍されるためより大型の原子力空母5隻を建造し、空母機動部隊の実働部隊を3部隊編成する。併せて搭載機もステルス性能を持った戦闘攻撃機の代替えする。原子力を採用するのは発電力を重視したためである。搭載する航空機は自主又は共同開発をも考慮する。
②巡洋艦はイージスシステムを採用すると同時にステルス化を図る。建造隻数は15隻以上になる。
③駆逐艦は1979年~1988年竣工の艦隊型天霧・綾波(40隻)と小型の朝風・花風・(20隻)の代艦を整備する。艦隊型駆逐艦は40隻を2020年から2035年までに、小型駆逐艦30隻を同じく2035年までに整備する。艦隊型駆逐艦はイージスシステムを導入する。
④原潜は“おやしお型”の整備に続き新型の対地対艦ミサイル搭載型“21X”型の建造に取り掛かる。
⑤艦隊給油艦・補給艦、観測艦、両極観測艦の更新を促進し、補給基地の充実・整備を図る。
⑥各種電磁兵器、無人の索敵・攻撃・監視機材を開発し人員削減に対応する。
以上を実現するために 政府は莫大な予算を確保しなければならなかった。






 
建造所 竣工年月 配備地区
 1.天城 三菱長崎 2016.2
 2.赤城 IHI石川島 2017.4 横須賀
 3.笠置 三井玉野 2018.4 佐世保
 4.淺間 神戸川崎 2019.4 舞鶴
 5.鞍馬 三菱長崎 2019.6
 6.伊吹 IHI石川島 2020.5 横須賀
 7.生駒 三井玉野 2020.5 佐世保
 8. 金剛 神戸川崎 2021.4 舞鶴
 9.比叡 三菱長崎 2020.5
10.榛名 榛名 2021.5 横須賀
11.霧島 三井玉野 2022.7 佐世保
12.妙高 神戸川崎 2023.4 舞鶴
13.高雄 三菱長崎 2024.6
14.愛宕 IHI石川島 2024.6 横須賀
15.鳥海 三井玉野 2025.6 佐世保
16.摩耶 三菱長崎 2025.4 舞鶴

【要目】
基準排水量 11,450㌧(後期型12,450) 満載排水量13,500㌧(後期型14,000)
全長187.7m × 最大幅20.0m  × 吃水6.6m
主機:ガスタービン(COGAG)10万馬力(6番艦以降は発電機2基のCOGLAG)
  2軸   速力33ノット  乗員:220名(女性隊員25名)
【兵装】
各種ミサイル用VLS × 2基(128セル)  70口径5吋両用砲 × 1基 
RAM近接防御柄ESSM21連装 × 2基  20㎜CIWSファランクス×2基
三連装短魚雷発射管× 2基    搭載機:60J × 1機
4連装長距離対艦・地ミサイル × 8基(後期型は飛行距離)

 79項で述べた妙高型は1985年から整備が始まり就役後2020年の時点で35年という長期にわたり第一線で活躍した。さすがに21世紀に入った頃から各艦修理期間が長くなり艦隊行動にも支障が出るようになった。この間、代艦の計画がなかったわけではなくミサイル発射専門艦の研究などがあった訳だが実際は小型の駆逐艦(朝風級の整備)の整備などが優先されたのであった。

 “天城”型イージス巡洋艦は上記の21世紀海軍整備計画に基づいて建造を開始したものだが2015年以降、周辺国の軍備力増強が顕著になり、特に中国海軍の艦艇増強ぶりは我国にとっておおいに脅威となってきた。新型イージス巡洋艦“天城”型はこれに対抗すべく妙高型の後継として計画されたもので2005年から計画され2010年から整備が始まった。竣工就役は2016年10月からで16隻の整備が予定された。これは空母機動部隊3部隊に対応するためのもので機動部隊には本級2隻が帯同することを意味している。本艦計画時、米海軍はズムウォルト級駆逐艦を計画中であり海軍も当初はこの艦を参考にした統合電機推進艦を計画したが予算が過大で隻数を揃えることが困難であると判断されたため総合電機推進はあきらめ従来型のガスタービン4基(COGAG)となり、更に8番艦以降はガスタービン2基と発電機2基を積んだCOGLAGに機関を改良しつつより効率的に整備されていた。

 本級も天城~鞍馬までの初期建造艦5隻はアレイバーク級駆逐艦Ⅱ型に対応するもので弾道ミサイル対応能力は備えていた。以後の艦にも艦載ソフトの近代化に沿って改良され11番艦霧島からはアレイバークⅢ型対応仕様となっている。

 このクラスの就役時、同航する新型駆逐艦はイージス化されているので艦隊防空力はシステム化されかつてないほど強力なものとなった。総合的な防御能力は米国との訓練でも発揮され仮想敵の攻撃がことごとく失敗に終わるという結果を得ることが出来た。部隊全体がイージスシステムでネット化した結果といえる。

 前期(天城~鞍馬)5隻のレーダー及びセンサー等の装置はマストに搭載される形となっているが、後期型(生駒~摩耶)11隻はユニコーンと呼ばれる統合マストを採用し艦橋上部がスッキリした。また、戦闘指揮所(CIC)は戦闘区画別に配備されていたPCを艦橋下部の一カ所に集約し迅速な対応を可能にしている。6番艦以降の対艦・地ミサイルは長射程距離の新型が搭載され発射台のケースが角型のものになった。また、21世紀計画艦から女性乗組員の乗艦が一般化され設備もそれに伴っている。